古文書から見る黒川の歴史 今後の調査課題

以上、里山黒川の大きな要素である農業と炭焼きを中心に、一定程度の史実を解明してきました。しかし、ここまで述べてきたところで、不明なところも新たに出現していることを指摘しておかねばなりません。以下それらを列記し、今後のさらなる研究の進展を期したいです。

  1. 台場クヌギの形成過程が記録の上に見当たらない。古い時代にどのようなクヌギの利用形態を採用していたのか。いつから、またどんなことがきっかけでそのような形ができてきたのか。それが分かる炭焼きの工程に関する記録、クヌギの植樹・利用等に関する記録の調査が必要です。
  2. 水利施設の形成や、農耕牛の飼育についても、それらがどんな構造をもち、どんな自然を形成していったのか、記録の調査を続ける必要があります。
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  4. 里山黒川の形成において大きな意味を持っていたのは農業や製炭産業でしたが、戦後農業生産の構造転換の中で、それはどう意識されていたのか。また、山の利用を必要としなくなるなかで、それらに替わる山の利用方法についての検討がどうなされてきたのか。
  5. 炭焼き業はいつごろ、なぜ衰退してきたか。またその衰退後、里山としての黒川はどのようにして維持されてきたのか。あるいは維持がどう困難になっているのか。古文書とは別の調査も必要となっています。
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  7. 地域の人びと、男や女、老人・壮年・青少年らが里山の恵みを日々の生活、たとえば食事・住居・年中行事・冠婚葬祭・遊び・勉学などにおいてどう享受してきたのか。こうしたことについて触れることができませんでした。記録は、どんなところに残されているのでしょうか。
  8. その他、気付いていない点も多々あるものと思います。


〔注記〕旧単位について
本論では、煩雑になることを恐れて古文書に記載の古い時代の単位表記を、一部を除き基本的にはそのまま使用しました。参考のために現在における公的な換算表(ただし概算)を下記に示しておきます。金高・銀高の現在的な価値への換算は、時代による貨幣価値の変動、価値感覚の時代的な推移等もあり、行いませんでした。

1 寸=3.03 ㎝  1 尺=30.3 ㎝  1 間=6 尺=181.8 ㎝
1 貫目=1,000 匁=3.75 ㎏
1 町歩=10 反  1 反=10畝   1 畝=30 歩(坪)
1歩(坪)=3.3 ㎡ 
1 畝=99 ㎡(約1 アールとみなせばよい)
1 反=992 ㎡(約10 アールとみなせばよい)
1 町=9917 ㎡(約1 ヘクタールとみなせばよい )

小田康徳(大阪電気通信大学名誉教授)