黒川の今昔 黒川のこれから

このガイドブックでは、黒川の歴史から現在の里山保全活動に至るまで、さまざまな側面をたどってきました。かつては炭という燃料を生産することが多くの黒川の人々にとって生業であり山々が常に使われていたからこそ、里山には多くの意味がありました。そして今は都市に暮らす人々が、自然と触れ合い、学ぶための場としても、この黒川に魅力を見いだしはじめています。この通り、里山に見出される価値というのは時代とともに変化していくものであることがわかります。また、炭焼き農家が減少しクヌギをはじめとした里山林は使用されることがなく、里山保全が第一目的となってしまうと、既に人口減少と高齢化率上昇という課題に直面する黒川の住民だけでこの責務を背負いきることは困難ともいえるでしょう。
エドヒガン(桜)の名所であり、新緑や紅葉の時期の黒川で楽しむ山々の景観は大変美しく、観光で訪れる価値のある場所となっています。また同時に「菊炭」という日本文化を後世に残すことや、里山だからこその生物多様性を維持するためにも、常日頃から黒川との交流を持つ人々がどれだけ増えていくか。これが、黒川のこれからにとって重要になるのは確かなことのようです。
この土地の持つ固有の価値を守り高めていこうと、すでにこの「日本一の里山」と呼ばれるようになった黒川に多くの専門家やボランティアが関わってきていることは、このガイドブックの中でも紹介してきました。また、そういったボランティア人材を育成する取り組みとして「北摂里山大学」も開催されており、知明湖キャンプ場や黒川ダリヤ園も、新たに外から人々に訪れてもらうきっかけのフィールドとなっているようです。

近年は近畿大学のゼミナール生たちの手で試験的に黒川の民家を借りての「里山カフェ」が開かれたり、菊炭生産家の今西家には炭焼きの見学や、その技術を習得するべく働きに来ている人もいます。また同じく本書で紹介した川西市の小学生に向けた里山体験学習のように、日本一の里山をまずは訪れてもらい、外からの人々が感じ取るものを住民側が受け取るという流れは、今後さらに重要視されることでしょう。かつて90 年代は黒川の玄関口に産業廃棄物が山積し景観を損ねていましたが、この地の美しさを再生させるべく住民と行政の協力で廃棄物を撤去。その跡地に2013 年誕生した黒川駐車場や、里山の魅力を発信すべく始まった「黒川里山まつり」などは、地域住民側の大きな動きでもあります。2012 年には里山の恵みを自然出産という形で活かしていこうと、移住者である島崎助産師により「しまざき助産院」が開業しました。こういった新しい活動は今後も注目されます。こうしてひとり、またひとりと黒川での活動を始める人が少しずつ増え、活動を始めた人同士や、外と内の間での交流も生まれてこそ、未来の黒川を語ることや担い手の育成が少しずつ可能になっていくはずです。

しまざき助産院

家族と移住した島崎さんが開いた助産院は自然と共存する出産の場をつくり、ここで産まれた子どもが再び里山へ遊びにくる循環を生もうとしている。

写真59. 知明湖キャンプ

写真60. 黒川ダリヤ園

写真61. 黒川里山まつり

写真62. 黒川駐車場

写真63. 北摂里山大学

写真64. 里山カフェ