川西市黒川 はじめに

阪神北県民局では、管内にある30 か所の里山の一つひとつを展示物に見立て、「北摂里山博物館(地域まるごとミュージアム)」(http://hitosato.jp/)として整備しています。今回このガイドブックでご紹介する川西市黒川は「北摂里山30」の1つに数えられ、また「日本一の里山」とも称えられる地域です。

川西市は兵庫県の東南部に位置し、東は大阪府池田市と箕面市に、西は宝塚市と猪名川町、南は伊丹市、北は大阪府能勢町と豊能町に隣接しています。東西に狭く南北に細長い地形で、気候は温暖で北部は山岳の起伏に富み、その一部は猪名川渓谷県立自然公園に指定されています。平坦な南部に市の中心市街地が形成されています。このガイドブックで紹介する川西市の最北端に位置する黒川。この地が誇る自然資産やその歴史、そして現在抱える課題などを紹介することで、黒川に魅力を感じ、またその魅力を広く伝えていく人が増えることを願いながら作成しました。

黒川の北東端には、能勢妙見山(標高662m)をひかえ、ここは大阪府との府県境ともなっています。妙見山は、大阪府の能勢町から本瀧寺を経て登る表参道側と、ケーブルカーやリフトカーが通じている兵庫県側の裏参道があり、特に桜の季節や紅葉の頃には大阪や兵庫の市街地から多くの人が訪れる土地でもあります。そのふもとに位置するこの黒川。古くから「黒川村」として存在し、1889年(明治22年)に兵庫県川辺郡のなかに含まれる東谷村の一部となりました。その後、1954年(昭和29年)に川西市が誕生するのと同時に東谷村は廃止となりますが、その後現在に至るまで、人が生活をするために切り開いた里山としての原風景を残す土地、すなわち、川西市のなかでも貴重な土地として営みが続いてきています。

山から木材を切り出し、そこで薪炭などの燃料を生み出すことで生計を立ててきた黒川の特産品は「菊炭」。遡ること豊臣秀吉の頃からお茶席で使用されていたという美しい炭は、今でもお茶の世界では愛されている逸品であり、今もなお、炭焼きが黒川では行われています。

ただし、一般家庭では薪や炭といった燃料は使われることが少なくなり、里山文化の存続自体にも、大きく課題がでてくるようになりました。

現在では里山保全のボランティア活動も増えつつあり、春にはお花見、夏には自然学習やキャンプ、秋はダリヤ園や紅葉ハイキングなど、豊かな自然を楽しむことのできる川西市黒川。ここに存在する貴重な自然と生活文化を、どのように未来へ残していくのかが大きく議論されるタイミングにきているようです。

本書は3部構成になっています。一つ目のパートでは、黒川が「日本一の里山林」とまで呼ばれるようになった理由を服部保先生(兵庫県立大学名誉教授)が執筆。そして次のパートでは小田康徳先生(大阪電気通信大学名誉教授)の執筆により黒川の歴史を古文書を読み解きながらたどっていきます。
三つ目は黒川の近現代を中心に、妙見信仰が流行したことで最も栄えていたとされる昭和初期についてや、鉱山労働、炭焼きの経験者の実体験を交えて構成しています。また、本書の最後には黒川の基礎資料も収録しています。

あなたも、まずはこのガイドブックをめくり、黒川を歩いてみませんか?

兵庫、大阪そして京都との文化の交流点ともいえる北摂の里山を知ることで、これからの自然との共存のあり方や、文化の伝承の仕方など、様々な課題が見えてくるかもしれません。

作成するにあたり、学識経験者をはじめ、地元の方々、黒川で活動するボランティア団体、黒川周辺の企業・団体、行政関係者を交えて検討委員会を設置し、ご意見やアドバイスをいただきました。また、学識経験者の監修のもと、黒川でのエドヒガンや台場クヌギの実地調査や黒川地域で保管されてきた古文書の解読調査を行いました。他にも、記録に残らない黒川の昔の話は、当時を知る黒川の方々にヒアリングをさせていただき、当時を知る上では貴重な情報となりました。

今回ガイドブックを作るにあたって現在集められる黒川の過去と現在、そして黒川の未来への想いを凝縮した1冊となっています。