キセキの里山・西谷 丸山湿原群

丸山湿原群とは

丸山湿原群
そのため、現在では「地域の宝物」として、地域住民、行政などが一緒になって丸山湿原群を未来に残していくための取組みが進められています。

丸山湿原群は、丸山(標高325m)の南西側の山間に位置する5 つの湿原からなる湿原群であり、兵庫県の天然記念物に指定されています。県下随一の面積と生物多様性を誇る湧水湿原(泥などの積み重なりがなく、湧水によってゆっくりと広がった湿原)で、湿原に特有のさまざまな生き物がみられる非常に貴重な場所になっています。

湿原について

湿原は湿地に成立する草原

丸山湿原群周辺にアカマツやコナラの二次林が広がるように、瀬戸内海気候下の暖温帯ではふつう森林が発達します。一方、岩壁、河川、池沼、湿地などの特殊な立地は土地的極相として多くが草原の発達する場所となります。滞水する頻度が高く、また地下水位が高いため常に過湿となる特殊な立地が湿地で、その湿地に成立する草原が湿原です。

湿原の4 つのタイプ

湿原のタイプは、低層湿原、中間湿原、高層湿原、湧水湿原の大きく4 つに分けられます。
暖温帯に属するため泥灰(未分解の植物遺骸)の堆積がみられず、貧栄養、酸性の湧水によって涵養され、かつミカヅキグサ属やヌマガヤなどが生育する湿原を一般的に「湧水湿原」と呼びます。湧水湿原は、西日本の太平洋側の丘陵地や低山地を中心に広く分布しており、丸山湿原群の湿原タイプもこの湧水湿原です。
湧水は酸性、貧栄養と特殊な環境であるため、富栄養性の高茎草本植物は侵入できず、低茎草本植物を中心とした貧栄養な環境にも耐えうる湧水湿原特有の植物が生育しています。

丸山湿原群の成り立ち

丸山湿原群には1m の深さまでシルトを主体とする地層が続いており、最深部に含まれる炭化していない植物片の年代測定が300 〜 400 年前であることから、湿原が本格的に発達したのは江戸時代以降と考えられています。
江戸時代になると湿原周辺の里山林は人の生活のために活発に利用されるようになり、絶えず落ち葉や柴が刈られて、土壌がやせて「はげ山」化しました。丸山湿原群周辺の地質は凝灰岩(火山から噴出された火山灰が積もってできた岩石)からなっており、「はげ山」化により風化した凝灰岩は非常に細かいシルトとなって降雨により谷底に溜まり、水が溜まりやすく湿潤なところになりました。特に丸山湿原群の場合、周辺のはげ山から流入するシルトの量が谷底から流出するシルトの量よりもわずかに多いという絶妙のバランスを保ち続けられたことがここまで丸山湿原群が大きくなった要因の一つと考えられています。
このように丸山湿原群の成り立ちは、人による里山林の利活用と密接に関わっており、全国的に見ても大変貴重な湿原であると考えられています。

丸山湿原群の魅力

湿原は生物多様性が高く、生き物たちのパラダイス!

湿原は、特異な生態系としてそこでしかみられない生物種を多数包含しています。同じ湿原をみても、丸山湿原群のような湧水湿原には、ミカヅキグサ属やタヌキモ属、ホシクサ属などが生育する特有の湿原植生が発達しています。また、低層湿原を除く貧栄養性湿原を生育地とする湿原生植物のじつに60%を湧水湿原でみることができます。
このように、湧水湿原は、生物多様性を維持するうえで非常に重要な生態系(ハビタット)といえます。

サギソウ

丸山湿原群の代表的な生き物たちを紹介します。
植物はサギソウ、トキソウ、カキランなどをはじめとする美しい花が見られます。
昆虫で代表的なものは、体長が2cm 程度と日本最小のトンボであるハッチョウトンボやヒメタイコウチなどです。丸山湿原群の代表的な生き物たちを紹介します。植物はサギソウ、トキソウ、カキランなどをはじめとする美しい花が見られます。昆虫で代表的なものは、体長が2cm 程度と日本最小のトンボであるハッチョウトンボやヒメタイコウチなどです。

ハッチョウトンボ

兵庫県下の湧水湿原では、湿原面積が大きくなるほど、湿原生植物の出現種数が増加する傾向があります。
丸山湿原群は、下表にもあるように湿原面積が県下で最大級、湿原生植物の出現種数も最大級であり、県下にある湧水湿原の中でも極めて重要な湿原であることがわかります。

※丸山湿原群は、生態系の貴重性を示す「兵庫県版レッドデータブック2011 生態系」(2011、兵庫県)において「規模的、質的にすぐれており貴重性の程度が高く、全国的価値に相当するもの」として、A ランクに指定されています。

湿原生植物と出現種類と湿原面積の関係(2010 年の調査データ)

丸山湿原群の保全と利活用

湿原には湿原特有の植生が成立し、そこでしか見られない生き物がいます。地域の生物多様性を維持するうえで湿原の保全は非常に重要です。
しかし、燃料革命以降、湿原及びその集水域の里山林が燃料や肥料などの供給源として利用されなくなって放置されると、里山林が発達して、樹木が湿原内に侵入し、その樹木による被陰により日照条件が悪化し、また、集水域の樹木の繁茂により蒸散量の増加に伴う乾燥化(涵養水の減少)を招き、湿原面積の縮小と生物多様性の低下につながります。
このような湿原の課題解決には、湿原及び周縁部における樹木の皆伐や里山放置林の間伐などを行う必要があり、丸山湿原群ではこのような植生管理を平成18 年より実践した結果、湿原面積の拡大や湿原生物の多様性が向上するなどの効果が見られました。現在、丸山湿原群では学識者、地域住民、市民団体、関係行政機関などが連携して丸山湿原群の保全と利活用を進めています。

丸山湿原群保全の枠組み

阪神北県民局では、北摂里山30 の一つである丸山湿原群が保有する貴重な生態系を守り、育て、後世に引継ぐため、丸山湿原群及びその周辺地域を「生きた博物館」として捉え、地域の貴重な資産であるとともに県民共有の財産として、その保全・活用を図り、次代に引継いでいくため、学識者、地域住民、関係行政機関、活動団体からなる「丸山湿原群エコミュージアム推進協議会」の活動を宝塚市とともに支援しています。
また、丸山湿原群の生物多様性を守り、環境学習や学術研究の場としての利活用を図るため、平成25 年より湿原及びその周辺地域を天然記念物化することを進め、平成26 年4 月に宝塚市教育委員会から天然記念物の指定を受け、また、平成27 年3 月に湿原及びその周囲も含めた71.3ha について兵庫県教育委員会から天然記念物指定を受けました。

丸山湿原群保全の会

丸山湿原群保全の会は、丸山湿原群の優れた自然環境を後世に引き継ぐため、地域と周辺市町の住民が協調・連携しながら湿原の保全と活用をおこなっていくことを目的に発足(平成18 年12 月)した団体です。平成20 年(2008 年)「丸山湿原エコミュージアム推進協議会」も発足し、地域ぐるみの応援がなされています。

サギソウ開花数調査の様子

活動内容

基礎調査、一般向けセミナーの実施、毎年8 月に実施しているサギソウ開花数調査などの植生調査、植生管理・湿原再生作業、西谷中学校及び西谷小学校3 年生への環境教育の支援などを行っています。
さらに、丸山湿原群の大切さと重要性を広く伝えるために、月1 回の会報の発行や、北摂里山博物館運営協議会と連携した広報活動も積極的に行っています。
ここでしか見られない小さな命を守るには湿原周囲の山も守る必要があり、学識経験者の指導のもとに地元住民や地域外の方、行政の協力を得て保全に取り組んでいます。