キセキの里山・西谷 西谷の草地の生物多様性

里草地の植物多様性

西谷の里草地では、400 種を超える草本種が確認されています。先に挙げたキキョウやオミナエシだけでなく、カワラナデシコやススキ、クズ、ハギの仲間などフジバカマ以外の秋の七草を全てみることができます(写真7 参照) 。

秋の七草やセンブリ、ドクダミ、ゲンノショウコといった多くの里草地の植物たちは、薬草(民間薬)として使われてきました(写真8 参照) 。

ツユクサやスミレ、エノコログサ、オオバコ、ヤハズエンドウ(カラスノエンドウ)などは、子どもの頃から親しむ里草地の植物です(写真9 参照) 。また、ヨモギやヤブカンゾウのように山菜として利用されてきた植物もあります(写真9 参照)。このように里草地の植物は、里の人たちの生活や文化と強い結びつきを持っています。
里草地は、人間によって作られた比較的新しい植生で、多様な由来を持った植物が暮らしています。

キキョウやスミレなど氷期に地続きになった朝鮮半島を経由して中国北東部から渡ってきたとされる大陸系遺存植物やエノコログサやオオバコのように稲作や畑作ととも人に運ばれて東アジア域からやって来たとされる史前帰化植物、オオイヌノフグリやシロツメグサ、マツヨイグサ(月見草)の仲間など明治時代以降に日本に持ち込まれた欧米原産の帰化植物など、異なる来歴を持つ植物が里草地で共存しています。

里草地の動物

里草地は多くの動物の暮らしの場でもあります。アゲハ類やツマグロヒョウモン、シジミチョウ類など多くのチョウの仲間が里草地で咲く花へ蜜を吸いにやって来ます。コバネイナゴやショウリョウバッタなど草丈の低い草地を好むバッタの仲間も里草地に多く暮らしています。トノサマガエルは春から秋はこういった昆虫などを餌としてとり、冬には里草地の土中で冬眠します。里草地の多様な植物がこれらの動物たちの暮らしも支えています。草刈りされず草丈が高くなった里草地ではカヤネズミの巣を見つけることもあります。

西谷の里草地に暮らす日本固有種

里草地に暮らす植物の多くは、日本以外の国でもみることができますが、日本だけに生育がみられる固有種もいます。里山林の林縁で、大輪の花を咲かせるササユリは西日本でしかみられません。秋の畦で青・紫色の花をつけるキセルアザミやリンドウも固有種です(写真10 参照)。これらの植物は里草地以外では、採草地や放牧地など他の半自然草地で、その姿をみることができます。

一方で、里草地の周辺で見られる動物たちにも多くの固有種がいます。例えば、シュレーゲルアオガエル、ニホンアカガエルなどのカエル類、ニホントカゲやニホンカナヘビ、ヤマカガシ、シマヘビ、アオダイショウなどは固有種です(写真11 参照) 。里草地脇の水路を利用するアカハライモリやセトウチサンショウウオ(旧カスミサンショウウオ)も固有種です。チョウ類では、カタバミ類を食草とするヤマトシジミが日本固有種です。身近な動植物たちに日本でないとみられない固有種が多いということは、里山や里草地の自然や生物多様性を守っていくことの大切さに気づかせてくれます。

写真11. 日本固有の動物であるシュレーゲルアオガエル

ニホンマムシ
噛まれたら怖いマムシも貴重な固有種です